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トマオナロッシの部屋

大阪で医学を勉強しながら、のんびり書いてます。

ロマンの夜明け

 西洋絵画の精神運動というか、風潮みたいなものにロマンチシズム、理想主義というものがある。これの(私にとっての)代表者と言えば、ドラクロワとかルーベンスだ。↓たとえば代表作はこれ。
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登場人物はみんな露出がきつくて、男性はムッキムキ、女性は超グラマラス。構図はダイナミックで劇的。宗教をテーマにしたものなら大抵神々しくて視点は下から見上げる感じ。ばりばり現実を誇張する。

一方でその正反対のものとしてリアリズムとか現実主義とか写実主義というものがある。厳密には写実主義が現実主義の一部だとかどうだとからしいけれど、ここでは深く考えないことにする。現実主義の代表と言えばこれ。
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理想主義と違って構図はありきたりで普通(に見える)。登場人物もヨボヨボだったり、ガリガリだったり。薄汚れてて薄暗くて、モノによっては積極的に醜い物をを表現しようとすらする。

 で、このリアリズムはロマンチシズムの反動として誕生したらしい。元々ロマンチシズムが主流だったが「これじゃいかん!」とか言う人が出て来て、その人がリアリズムを開発した…っていうイメージ。

先日はこれについて考えていた。それで以下のことを発見した。

理想主義の対義語は現実主義。しかしこと芸術に関してはそうとは言い切れない!

どういうことかと言うとこれは簡単なことで、つまり、現実主義者はロマンチストじゃないのかっていうことである。なんか、言葉の芸術的な意味と慣用的な意味を混交しているようで分かりにくいが。

要するに私は、あんな普通で何の変哲も無い日常の風景を、ここまで美しく描ける現実(写実)主義者こそロマンチストそのものではないかと思うのだ。現実主義者と言うとどうしても冷めていてニヒルなイメージがある。もちろん作品に依る部分も大きいだろうが、実際はむしろ逆のように私には思える。

例えば宗教をモチーフにした絵画の場合、ロマンチストは現実を誇張して、その絵の迫力で神の偉大さみたいなものを表現する。大抵、後光がぱぁーっと差している。これは言い方を変えれば「ほら、神様はこんなに凄いんだぞ!」と相手をある意味脅しつけることで説得しようとしていると言えまいか。その意味で理想主義者の神は暴力的だ。

しかし、現実主義者はそのやり方に反発した。ある画家がその絵の中で表現したい何かしらの美学は、ただ現実をオーバーに誇張さえしていれば表現できるものとは限らない。

 単に青い鳥的な、「本当の幸せは実は近くにあるんだ」的なことだけを発見したから現実のありのままを描こうとする写実主義が生まれたわけではない。以前ここで『立ち上がるコトバ』という文章を書いた。そのテーマは「言葉だけで表現しきれないビミョーなニュアンス」だったのだが、それを今度はいかにしてキャンバスの上で表現するか?ということ。ただ誇張する以外にもやり方は沢山あるはず。これが理想主義から現実主義への転換において芸術家が最も大きく変わった点だと思っている。これを契機に美学だったりロマンだったりをどんな風に表現するかという芸術家たちの試行錯誤が始まり、印象主義とか超現実主義とかが生まれ、現在のモダンアートに至る…んじゃね!?

なんて、結構壮大なことを考えた。